塩谷定好回顧展 講演会「塩谷定好と芸術写真」 の感想まとめ
今日、初めて塩谷定好という写真家を知りました。
芸術写真の草分け的存在で、植田正治氏の師という事ぐらいは知っていたけど、何がどうすごいのか、まったくわからないまま今日に至っていました。
被写体は山陰を中心に撮影された風景や人物などで、モノクロの写真は、絵画のような静けさを持ち、どちらかというと地味な写真が多いという印象。個人的な話ですが、自分が10代~20代の頃は、ピュリッツァー賞を取るような報道写真に憧れたり、斬新な商業写真に心奪われたりしていました。しかし、山陰に戻って来てかれこれ10年が経ち、30代になった今、改めて彼の作品を見返してみると、じわじわとその写真の”心地良さ“のようなものを感じています。その”心地良さ“はどこから来るのか、塩谷作品の魅力について、鳥取県立博物館主任学芸員の竹氏倫子さんのお話をまとめると、
魅力① 完璧なプリント技術・卓越した技法
魅力② 身近な題材に美を見いだしている
魅力③ 明快な構図・叙情に流されない知的な画面構成
とのことです。そして、あるエッセイを竹氏さんが読み上げて紹介されました。
塩谷の言葉より
(『塩谷定好名作集』昭和50年、日本写真出版)
わたしの写真は、自然をしたう、と申しますか、自然のこころを、わたしの心として写すことに専念してきたと思うのです。
四季おりおりの風物に詩情を動かされ、山も川も海も、田園の風景も、人も、自然の感情を自分なりに発見し、感動しながら一生懸命に写してきたといえます。
なぜ塩谷定好が海外で評価されたのか、これまでよく解りませんでしたが、作品に溢れ出す自然に対する謙虚なこの姿勢こそが、欧米の「凶暴な自然を征服する」という自然観と全く異なるものであり、彼が認められた理由の一つだったとの説明に、初めて腑に落ちる思いがし、同時に自分が感じていた“心地良さ“もそこから来ていると感じました。
また、芸術家やものづくりをする人たちは往々にしてユーモアに欠け、私小説的になりがちだが、塩谷作品には全くそれがなく、健康的で明快かつユーモラスである点も高く評価されているというお話も印象的でした。
そして記念館設立にあたり、震災以降、日本人の自然観にも微妙な変化が起きている今だからこそ、謙虚に自然に向き合っていた塩谷定好の言葉を、生きる信条として、国内外の多くの人に伝えていってほしいとのエールを頂きました。
竹氏先生、貴重なお話ありがとうございました。
こちらから鳥取県立博物館収蔵資料を見ることができます。 鳥取県立博物館
塩谷定好回顧展
日時:2011年11月22日(火)~11月27日(日)
主催:塩谷定好写真記念館設立準備会
会場:まなびタウンとうはく 展示ホールにて